「フルリモートワークの同僚」から与えられた、新しい視野と経験

コロナ禍で働き方の変化を迫られ、「副業」「リモートワーク」「テレワーク」という言葉がここ1年で一気に一般化しました。対面せずにzoomなどのツールを使って行うオンラインミーティングも、「まだ未経験」という人は少ないと思います。

JOINSでは、創業した4年ほど前から、「都市部で働く人の力を地方企業で生かしてもらう」形での副業・兼業マッチングサービス事業を行ってきました。実際に約85%が首都圏に住み、地方企業で副業・兼業を行う形です(2020年11月時点、企業と契約した延145人対象)。

そのため、JOINSを通じて地方企業で副業を行う方々の多くは、1~2ヶ月に1回程度地方企業に「出社」し、週1回程度行う所属する部門の「同僚」とのミーティングはオンラインで参加、という働き方をコロナ前から行っています。

今回は、JOINSに登録している「副業プロ人材」(副業人材)とともに「Webサイトの改善」を行った不動産会社と家具メーカーで働く方々に、「副業人材と働いて今、思うこと」を率直に話していただきました。2人の感じたことから、副業で働く人が現場で社員とともに働くイメージを膨らませてみてください。

副業人材がくれる「太鼓判」が後押し(株式会社レントライフ)

副業人材とともにリニューアルしたレントライフのホームページ

「都市部の大手企業で働く”やり手”が、地方の中小企業にやってきて働く。しかも、正社員ではなく、テレワークで副業で働く人とプロジェクトを遂行して欲しい」ーー。社長からそのように告げられたら、とまどう人は少なくないと思います。

実施施策:Web集客改善(B2C)

レントライフに入社して20年超、Web対策室でホームページの集客や情報アップロード、広告出稿などを行う鎌倉光男さんも、「ITの知識に長けた副業の人に、上からあれやこれや言われながら働くことになるのではないか……」と不安に感じたそうです。


企業側が副業人材を採用する前に感じていた不安
①ITの知識に長けた副業の人に、上からあれやこれや言われながら働くことになるのではないか……
②難しい言葉で説明され、納得の行かない結果になるのではないか….

レントライフで副業をした人は大手通信会社で働く40代の男性でした。最初の打ち合わせ時点で、「押しつけがましくなく、難しい言葉を使うことなく、ご自身の経験を基にした説明をしてくれました。話している内容が、私たち現場の社員も常々考えていたことと同じだったことですぐに打ち解けられました」と鎌倉さんは言います。


実際に副業人材と一緒に仕事をやってみた結果
①押し付けがましくない
②難しい言葉を使うこともなく、自身の経験に基づいて課題について説明してくれた
③話してくれた内容が現場の社員と共感できた
④現場の社員と共感した結果すぐに打ち解けられた

実際に行った施策と効果について

レントライフの副業人材活用の詳細

たとえば、賃貸の仲介管理の事業のなかで、Webサイトからの客の問い合わせを増やすための施策を行った際のこと。賃貸物件を探している見込み客が検索したときに、当社のホームページが上位に表示されるようにするSEO対策についての情報は、長年、Web対策室で働いていた鎌倉さんの頭の中にもありました。ただ、数あるSEO対策のどれを反映させたらいいのか決め手に欠けていたのです。


レントライフのWeb集客における課題
・大手不動産のサイトに対してSEOで対抗するのが難しい
・顧客獲得するためのWebサイトではない
・自社の価値を訴求できるWebサイトではない

そこを副業人材の人は、ページ構成やサイトを訪れた客の回遊性を意識した「流れ」を考え、その仮説を外注先のホームページ制作会社に伝え実行。結果、サイト訪問者の離脱率が減りました。


実際に行った施策
・ホームページ流入からお問い合わせに至るまでのフローの分析
・ホームページ制作会社へのディレクション
・リピーター獲得のためのページ導線の設計
・社内で上がった仮説に対して、分析し施策遂行

「リストの作り方、ページ構成、次に繋がる導線の作り方など基本的な考え方はわかっていました。こうしたらWebサイトを改善できるのではないか、という仮説があっても自信がなく、社内で絶対にやりたい!と強く言えませんでした。それが、名の知れた大手企業で知見を積んだ人が、その経験を元に、このやり方がベストだ!と太鼓判を押してくれる。社内全体がよし、やろう!という方向にまとまりました」(鎌倉さん)


EC改善を内製化したら出た効果(マルニ木工)

マルニ木工の家具(マルニ木工提供)

一方、マルニ木工のEC(オンラインショップ)を担当している社員は、鎌倉さんと違い、ECの担当者ではあったものの、「ECサイトの改善」の知識は皆無といっていい状態でした。

実施施策:EC改善

外資系商社からマルニ木工に転職し、当初は海外事業を担当。その後、国内直営店担当を経て、直販を強化することになりEC(オンラインショップ)を担当することになったといいます。副業人材と出会うまで、SEO対策やサイト改善の実作業は、外注先のECコンサルティング会社に丸投げしていました。


施策前の状態
・SEO対策やサイト改善作業はECコンサル会社に外注
・月2回の簡易的なミーティング
・修正、改善提案などは一切なし

「基本的にコンサルは、サイト立ち上げやリニューアルの実作業をしっかりやり、その後は自社でがんばってくださいというスタンスのように感じます。もちろん聞けば、SEOがどういうものかは教えてくれましたが、こうするといいですよ、などの提案はなかったので、月2回のミーティングもあっさりしたもの。私自身にEC改善に関する知識がないので、こうして欲しいという要望も伝えられず、積極的に進められずにいたんです」(マルニ木工・EC担当社員)

マルニ木工で副業で働いている30代の男性は、本業で大手小売りのECマーケティングを行っている人でした。「3カ月ともに働いてみて、欲しい知識と情報を持っていなければ、その時点で契約を更新しなければいい」と考えていたとマルニ木工のEC担当社員は振り返ります。

マルニ木工の副業人材活用の詳細

「それが、副業人材の方にコンサルとの月2回のミーティングに参加してもらったところ、これまでとは違う中身が濃いものになりました」(マルニ木工・EC担当社員)


マルニ木工のWeb集客における課題
・2018年にサイトリニューアル。アクセス数は増えているが購入に至らない
・担当者のECサイト運営経験の不足
・課題点がわからない

たとえばWebサイト分析を行う際のツール、Googleアナリティクスの見方、説明からわかりやすく説明してもらえます。その上で、その数字にどういった意味があるのか、分析結果とともに、次の施策を提案。マルニ木工のEC担当社員も、徐々にミーティングで積極的な意見を出せるようになっていきました。

現場社員と副業人材「合わせ技」のメリット

マルニ木工の家具(マルニ木工提供)

「特に勉強になったのは、”広報とオンラインショップ施策の連携”ですね」(マルニ木工・EC担当社員)

副業人材の提案で、これまでやっていなかった広報部門と情報共有を行うことにしました。イベントを開催する、テレビやラジオなどメディアで取り上げられるタイミングで、オンラインショップも施策を打ち、ECの集客に繋げたのです。

テレビ番組で取り上げられることがわかったときは、会社名で検索されることを見越し、「リスティング広告」を検索ワードで引っかかりやすくするように変更。リスティング広告出稿の比率を高める施策を副業人材が実行しました。加えて、サイトトップ画像や購入フローの変更を行った結果、テレビ番組に取り上げられた月のサイト流入数は、それまでの月間流入数と比べて200~300%の伸びとなりました。

「イベントの実施やメディア露出とECサイト施策を連携させて、効果を最大化するのは、大手企業なら当たり前のようにやっていることかもしれません。ただ、専門の人材が社内にいなかったのでこれまで気づけませんでした」(マルニ木工・EC担当社員)

リスティング広告の費用対効果が高い使い方、ECサイト上でのキャンペーンなどイベントの効果的な投入、SNS投稿のタイミングなど、副業人材は自らEC改善施策を実施しながら、「なぜそうしているのか」を、毎週のオンラインミーティングでマルニ木工のEC担当者に丁寧に説明しているといいます。


実際に行った施策
・テレビなどのマスメディアだけではなく、デジタル広告(検索連動型広告(リスティング広告))の配信を行った。
・サイトのメインビジュアルを変更し離脱防止
・購入フローの変更
・ECサイト上でのキャンペーン開催
・SNS投稿
・毎週のオンラインミーティング

改善施策を実行してもらうことは外部企業にアウトソーシングできます。ただこの「丁寧な説明」は、「ともにマルニ木工で働いている」という感覚がお互いにないとできない、副業人材と働くならではのやりとりでしょう。

マルニ木工では、ベテランの職人たちが木にこだわって技術を蓄積してきた(マルニ木工提供)

副業人材と働き始めて1年半以上が経過し、マルニ木工のEC担当社員自身のECサイト施策の知識が格段にアップした今、あえて副業人材に任せることなく、社員だけで仕事をまわしていけるのではないか……そんな質問を投げかけると、次のような答えが返ってきました。

「もちろん、副業人材の方と働いている間に、オンラインショップで売り上げを伸ばすためのさまざまなやり方、考え方を身に付けることができました。とはいえ、次々と移り動くビジネスのなかで、プロフェッショナルな方には到底及びません。

餅は餅屋。私たち家具メーカーの社員は、自社の”ものづくり”に関する知識、商品への愛情は誰にも負けないと自負しています。その商品知識や現場ならではの知見と、Webマーケティングの専門家である副業人材の方の知見をあわせたとき、何倍もの力になる。これからも力を合わせて、世界中の人に当社の商品を届けたいと考えています」(マルニ木工・EC担当社員)