人事組織コンサルティング会社の株式会社ソリューション(大阪市中央区)は、業務効率化のために2021年から社内にクラウド会計ソフトを導入しました。マニュアル策定や初期設定など導入に至るまで活躍したのは、財務・経理を専門にする副業・兼業プロ人材(副業人材)のAさんです。長友威一郎社長にAさんが行った業務や、実際に出た成果を詳しく聞きました。
目次
ブラックボックス化していた経理を変える(株式会社ソリューション)
――2020年10月から3カ月間、副業人材を活用しました。人材を募集したきっかけは何だったのでしょう。
「10年近く勤めた経理・会計の担当者が、退職することになったのがきっかけです。当社は従業員20人ほどの規模ですが、これまで1人の担当者が経理と会計を担い、顧問税理士の方とやり取りをしていました。
会計と経理を担当者1人に任せていたため、最終的に上がってきた数字は把握しているものの、そのプロセスが分からず『ブラックボックス化』しているという課題を抱えていました。
・上がった数字のみを把握
・数字に対するプロセスを把握せず、「ブラックボックス化」
そこでこのタイミングで、担当者が行ってきた 業務を把握した上で、業務効率化のために皆が使えるクラウド会計ソフトの導入を決めました。ただ、どのソフトを入れるか比較、検討したり、マニュアルを策定したりすることは専門の知識を持たない私や社員にとっては時間がかかる作業です。
入れるシステムが決まれば、運用は自分たちでできるので専任者を雇用するより財務や経理の専門の知識を持った方に、スポット的に導入からシステム構築までをお願いしたいと考え、人材を募集しました」
・クラウド会計ソフトの導入
・マニュアルの策定
・システム構築
ソフト選定からマニュアル策定まで 副業人材が行ったこと
――2020年10月にAさんと契約されました。Aさんが行った業務について詳しく教えてください。
「大きく分けて5つあります。
①会計ソフト導入、運用までの具体的なスケジュール策定
②会計ソフトの選定と提案
③ソフトの初期設定と社員への説明
④使い方のマニュアル作成
⑤退職する経理担当者が行っていた業務を聞き取り、標準化
することです」
「実際、クラウド会計ソフトを入れるまでどんな段階を踏んだか説明します。まず導入を進める第1フェーズ、導入したサービスを社員が実際に使ってみる第2フェーズ、新システムに完全移行という3段階 を組みました。昨年10月からスタートして、新しい期がスタートする今年4月 には完全移行する計画です。
- 第1フェーズ:導入を進める
- 第2フェーズ:導入したサービスを社員が実際に使ってみる
- 第3フェーズ:新システムに完全移行
最初に社内でプロジェクトチームを立ち上げました。メンバーは私、社長室のメンバー、Aさん、大阪の現場責任者とメンバー各1人、 在宅勤務で業務をサポートしてくれている方、当時の経理担当者、顧問税理士の計8人です。
昨年秋に会計ソフトが決まった段階で、Aさんにはプロジェクトチームのメンバーに先行して使い方の説明をお願いしました。ソフト導入後は自分たちで運用するので、早くから社内のメンバーが使えるようにしたいという狙いからです。大阪の現場責任者ともう1人の社員が実際にソフトを使い、交通費などの経費精算、顧客への見積書などを作りました。分からない点はAさんに聞いて進めました。同時並行でAさんにはソフトのマニュアル作成を進めてもらいました。
①担当副業人材Aさん→全体的なディレクション・社員にソフトの使い方を説明・ソフトのマニュアル作成
②大阪現場責任メンバー1名→実際にソフトを使い、交通費などの経費精算、顧客への見積書作りなど
③在宅勤務で業務をサポートしてくれている方、
④当時の経理担当者、顧問税理士
――副業のAさんは関東地方にお住まいです。顔を突き合わせての打ち合わせが難しい中、どのように業務を進めたのでしょうか。
「1カ月に2、3回、オンラインで定期的なミーティングを開き、あとはメールや電話などで進捗を確認しながら業務を進めました。当社で使っていたビジネスチャットでグループを作って、議事録は全てドキュメントで管理してプロジェクトチームの全員が情報共有できるようにしました。
私がAさんにお願いしたのは『50点の完成度でもいいので、まずは業務を回せるようにしたい』ということです。もちろん支払いなどお客様に迷惑をかけることは許されませんが、最初から完璧を目指さず、走りながらブラッシュアップしていくことを重視しました。
プロジェクトチームを立ち上げてから約2カ月後に、全社員を対象とした説明会を開き、Aさんがクラウド会計ソフトの使い方を説明しました。この時点で先行してソフトを使っていたメンバーは、かなりソフトを使いこなせるようになっていました」
社内業務が減り、クライアントと関わる時間が増えた
――今はトライアル中とのことですが、具体的にどのような成果が出ていますか。
「クラウド会計を導入する前は、紙ベースでの管理資料が多い経理でした。 社内でも二重、三重に承認が必要で時間がかかっていました。いわば『人力』の経理だったのです。エクセルを使っていたのですが、経費申請する社員も計算を間違えることがありますし、経理が経費申請データを取りまとめるまでの過程でもミスがあったのですが、作業上の間違いをチェックする仕組みがありませんでした。
今は社内の承認ルートも短くなり、顧客への見積書の作成などこれまで20分近くかかっていた作業が、5分に短縮できるようになり、入力ミスが減りました。当然、紙の使用量削減にもつながりました。当社はコンサルタント業なので、外勤も多いのですが、社員が出先から経費精算できるようになったことも大きいです。
感覚的にはなってしまいますが、メンバーが社内的な業務時間が短縮されて、クライントの方と関わる時間が増えたことが、クライントの方からの感謝の言葉やご紹介が増えているように感じます。その結果、社員が仕事を楽しそうにしている姿を目にしますので私も嬉しく感じます。自分たちでも時間をかければ導入は出来たと思いますが、本業がある中になるので、時間がかかったでしょう。4月からは新ソフトに完全移行します。
また、退職者からの引継ぎも、Aさんに入っていただいたおかげでスムーズに進みました。ソフト導入などで新規採用せずに業務を進めることができています。
Aさんにお支払いした報酬は3カ月で約30万円です。 業務の中身を考えると外注に比べて、コストも抑えることができたと感じています。また後述しますが、社員とのコミュニケーションなど、ソフト導入の業務外の部分でも満足しています」
・入力ミスが減り、社内工数の担保ができるようになった
・紙の使用量の削減
・社員が出先からリアルタイムで経費精算できるようになった
・メンバーが社内的な業務時間が短縮されて、クライントの方と関わる時間が増えた
・クライントの方からの感謝の言葉やご紹介が増えているような感じがする
――副業人材を募集した時に、複数の応募がありました。Aさんと契約した決め手は何だったのでしょうか。
「会計の知識があることは大前提なのですが、面談では社員とコミュニケーションをとりながら、業務を進めてくれる人かどうかという点を重視しました。
実際、Aさんは話を聞くことも、場を盛り上げることもとても上手で、良い意味で『経理マン』へのイメージが変わりました。また、社員とコミュニケーションをとり、情報を引き出す力も持っていました。だからこそ経理担当者との引継ぎがスムーズに進みました。
スキルで言えば、税務署やスタートアップ、大手企業に勤務された経験があり、多様なフィールドでの経験があることも魅力でした。
副業人材を募集する時には、『どんな業務をやってもらいたいか』ということと、人材像を明確にすることが大切だと思います。複数回面談を行ったことで、私自身も求める人物像がクリアになっていきました」
・Aさんは話しを聞くことも場を盛り上げることも得意そうだった
―-3カ月で契約を終了した理由は何だったのでしょうか。
「副業人材と契約する当初から、ソフトを導入した後は自分たちで運用することを決めていたためです。だからこそ早い時期に現場責任者をプロジェクトチームの中に入れ、早期に自走する体制を組みました」
―-今回、副業人材と一緒に仕事を進めてどのようなことを感じましたか。
「副業人材の活用を考えていらっしゃる経営者の方には、副業の方と進めた業務に対して、現場がどれぐらい理解したのか、どれぐらい浸透したのかを一つのKPIにするとよいと思います。当社もソフトを現場に定着させるためには、4月からの全面移行に向けてこれからが勝負だと思っています。社員全員が使いこなせるために何が必要かを考え、経営者自身が業務を遂行する力も必要だと感じています」
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