「会社のコアメンバー=フルタイム・正社員」という考えを持っていませんか。私たちがインタビューする中小企業経営者の中には、人手不足に悩む会社が少なくありません。コアメンバー=フルタイムの正社員という考えから一歩離れて見ると、実は多様な選択肢が見えてきます。今回は2つの企業へのインタビューを通して感じた人手不足の課題の解決策について考えます。
目次
【課題①】ハローワークではデジタル人材がこない。。
ある製薬会社は長野県の人口数千人の町にあります。4代目の社長はECサイトを強化するため、最初は正社員の求人を出しました。地元のハローワークにも登録しましたが、マッチする人は見つかりませんでした。「山奥でECを強化できるスキルを持つ人の採用はものすごく難しい」。社長は壁に突き当たったといいます。
「プロ拠点」からの紹介で副業人材を活用
「副業は知っていましたが、自分の会社の募集はフルタイムと考えていたので、副業の人と仕事をすることは頭の中にありませんでした」。
しかし、45道府県に設置されている「プロフェッショナル人材戦略拠点」(プロ人材拠点)の紹介で大手企業でマーケティングを担当する副業プロ人材を活用しました。
週次でPDCAを回し、ECの売上高が2割増
副業プロ人材と一緒にECサイト改善のPDCAを週次で回すことができるようになり、単月の売上高が前年同月比で約2割伸びたといいます。
「過疎地であっても将来を描ける」
この会社は以降もECの売り上げを順調に伸ばしています。4代目社長は「副業プロ人材と出会うことは、場所の制約にとらわれることなく会社が成果を出せることにつながります。過疎地であっても地域の良さをフルに発揮し、将来を描けるとてもありがたい仕組み」と話しています。
【課題②】「毎年新卒採用しても3~5年で転職してしまう・・」
ある老舗の製造業の社長は採用の悩みを抱えていました。
転職したいという若手から『人生100年時代、80歳を超えるまで今のスキルだけで食べていくには限界がある』と言われたことがあります。『そうだよな、転職したほうがいいよな』とどこか納得してしまいました。
社長はこう言葉を続けました。「今回、副業プロ人材と一緒に仕事をしてみて、採用や正社員の働き方への考えかたが大きく変わったのです」。
リスティング広告強化へ副業人材を活用
この会社はコロナ禍で売り上げが落ち込み、新規顧客開拓の施策の一つとして「リスティング広告」と呼ばれるウェブ広告を強化することにしました。リスティング広告とは、検索サイトでキーワードを入力した時に関連性の高い広告を表示する方法です。
「正社員=100%自社の仕事」から離れてみる
社内にノウハウや専門の知識を持つ人材はいないため、副業プロ人材にウェブマーケティングの業務を依頼。約2カ月という短期間でゴールを達成しました。
副業人材と仕事をしたことで「正社員だから100%自社の仕事をする」という考えから、「社員がウチの会社以外の仕事をすることで、別のスキルを身に着け、結果として長く働くことができる組織をつくれるのでは」という思いに至ったといいます。
「正社員=100%うちで仕事をする」という前提が、結果的にゼロかイチ(辞めるか、残るか)を迫り、転職が増えていた要因ではないかと考えたのです。
もちろんウェブマーケターやエンジニアなど場所の制約が緩やかな仕事とは異なり、機械設備を使う製造業の場合、現場でなければできない仕事は多いでしょう。
ただ、100%自社の仕事をしなければならないという制約から離れることはできます。社員の業務時間の一部を、興味がある分野の研究などに充てることを認める企業は複数あり、商品開発につながっています。
「単発、外注」から「長期的な契約」へ その背景は?
副業人材やフリーランスが急増、長期契約する人材も
最近は副業プロ人材と1~2年以上契約を続ける中小企業も増えてきています。
上記の図のように、企業が業務委託契約を締結し、業務を依頼する個人には単発の業務や外注的な扱いをすることが主流でした。
しかし、2018年からの副業解禁とリモートワークの普及により、人材市場に個人事業主が急速に増えました。これまでの「単発・外注」の仕事から「継続・メンバー」としての仕事に変化してきているのです。
副業先の企業のミッションに共感し、実現に向けてメンバーとして共に働くことで「正社員以外の選択肢」が生まれています。
副業プロ人材をメンバーとして活用して成果を出していくノウハウを社会全体で言語化し、情報を共有していくことが重要だと感じています。
(イラスト|freepik.com)
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「毎年新卒を採用しているのですが、3~5年ほどで転職してしまうケースが多いんです。