副業解禁している大企業は? 経団連報告書をひもとく

経団連が副業・兼業の促進に関する報告書をまとめました。

副業の容認企業は現状2割にとどまるものの、社員の働きがい向上につながる施策と分析しています。

報告書をもとに企業と副業との関係をひもときます。

副業解禁が広がっている背景

副業を認める企業の割合は2018年は14%だったが、2021年には24%に増加しており、企業の副業解禁が広がっています。

報告書によると、IHI、ヤフー、ライオン、東京海上日動火災といった幅広い業種の企業が副業を認めているのが分かります。

さらに、副業を受け入れる意向がある企業の割合を加えると47・8%になり、半数近くが受け入れに前向きな姿勢を示しています。(パーソル総合研究所まとめ)

その背景として、経団連の報告書では主に4つの点をあげています。

①リモートワークの広がり

リモートワークと副業は非常に相性が良いです。

仕事をする場所が問われないため、隙間時間をうまく活用して行うことができるからです。

ただ、リモートワークが困難な業種では副業がほぼ認められていないのが現状です。

例えば、建設業やドライバーに対してインターバル規制が設けられている運輸・郵便業などが挙げられます。

②労働時間の管理モデルが提示されハードルが下がった

これまでは副業解禁が進まない背景の一つとして「労働時間の管理が煩雑」という理由がありました。

しかし、厚生労働省が2020年秋に公表した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では簡単な労働時間管理の方法が示されました。副業解禁の促進が期待されます。

③人生 100 年時代の到来

人生100年時代を迎える中、「一つの会社で定年まで勤めあげる(就社)」以外の 働き方や生き方を希望する人が増えています。

また、2021年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法により、70歳までの就業機会の確保が努力義務とされました。25年4月からは、定年制を採用しているすべての企業で65歳定年制が義務となります。

今後も、労働人口の減少は加速し、定年退職年齢が引き上げられることも予想されています。

この「人生100年時代の到来」「人生における労働期間の延長」を踏まえて、多様な働き方を望む声が高まってきています。

 

④副業が結果として社員のエンゲージメント向上につながる

経団連の報告書では、副業は結果として、本業へのエンゲージメント向上につながる、という成果も指摘しています。
※エンゲージメント・・・企業と従業員の結びつきが強い状態を指して「エンゲージメントが高い」と表現される

副業を解禁している企業経営者によると、

・副業・兼業の施策によって、失敗を恐れず 挑戦し続けることの重要性を社員に伝えることができた
・副業・兼業をしていない社員やステークホルダーに対して「柔軟な働き方を重視 する会社」であることをアピールできた
※ステークホルダー・・・企業の利害関係者

という声が上がってきています。

経営者が社員に対して、明確化した副業導入の目的を伝えることが、働き手である社員との理念の共有を生みます。

結果として、会社に対する社員のエンゲージメントの高まりへと繋がっているのです。

やってよかった!人材と副業活用企業の声

では、副業人材はどのような働き方をし、どのようなメリットを感じているのでしょうか。

事例をもとに紹介します。

事例①:働き手Aさん(40代) 経団連「副業・兼業の促進報告書」より

【本業】情報通信業(人事)✖️【副業】地方中小企業の人事制度構築

副業・兼業を通して得た学び、感じたメリット

・人事制度を一から練り上げる貴重な経験ができ、幅広い知識を身に付けることが でた
・経営理念に立ち返って考えることの重要性を改めて認識できた
・小手先の運用改善に留まらず「会社としてどうありたいのか」、「社員にどう働いて もらいたいのか」というパーパスを、
様々な人事施策に一気通貫で落とし込んでいく必要があること実感した
・副業での気付きは本業でも活きており、普段の業務でも常に目的を意識して取り組めるようになった
・本業で培ったPowerPoint や Excel のスキルが、社外でも 通用するという意外な気づきも得られた
・副業・兼業先の 社員から「作業がとても早い、どうやって いるのか?」と驚きをもって聞かれること も多くあった
・普段から当たり前の ようにやっていた作業スキルが評価されることは、新たな気付きだった

本業先への思い、今後の展望など

・寛大に認めてくれた本業先の企業には感謝している
・今後、副業・兼業で 得た知見を本業に還元していきたいと思っ ている
・以前は「本業で働き続けるか、辞めて転職するか」の二択だと思い込んで いたのですが、副業・兼業という選択肢があることで、
それとは違ったキャリアが 築けることを身をもって体感している
・副業・兼業を始める前はいろいろ不安があったが、まずはやってみる、新しい 境遇に飛び込んでみることが重要だと思った

 

事例②:株式会社シィメス
JOINSメディア「神戸市特集(2)ECサイト構築へチームで走った3カ月」より

副業人材活用の背景

株式会社シィメスは、副業人材を活用し、SNSで新規顧客を獲得したい、という狙いがありました。

副業人材の業務内容

・継続的な運用を見据えたWEBマーケティングの仕組みづくり
・業務フロー・マニュアルの整備
・新規顧客獲得のためのSNS活用
・WEBマーケティングのビジネスフレームワークの構築
・オンライン相談窓口の立ち上げ
・プロジェクトメンバーの知識・スキルの獲得のサポート

副業人材活用を振り返って

・新規顧客の獲得にSNSやホームページを活用する必要があることはわかっていたが、社内に実現できる人材はいなかった
・ メンバーの多くは専門用語を一から学ぶ必要があるレベルだった
・副業人材がメンバーの一員になったことで、目標達成に至るステップが明確になった
・定期的な打ち合わせが進捗管理にもつながった
・毎週の課題・宿題をこなす中でメンバーが成長した
・これらのプロセスで、プロジェクトへの愛着を深めていく様子も感じられた
・最終的に社内のインサイドセールスの仕組みが確立できた
・自社で継続的に運用できるスキル・経験も得られ、大きな収穫となった

副業容認は企業にとってはプラス?マイナス?

結論から申し上げると、副業容認は企業にとってプラスに働くことが多いようです。

実際、副業を容認している多くの企業が、プラスの効果を実感しています。(下図)

確かに、副業を認めると、「社員の転 職・離職を誘発してしまわないか」といった 懸念の声が挙がるでしょう。

また、副業を認めても効果を実感できていない企業があるのも確かです。

しかし実際、副業を認めたことで、むしろ優秀な人材の確保や定着につながったと実感している企業は多いことは、上記の図からもわかります。

 

JOINSのマッチングサービスを介してもIT企業やメーカーといった大企業の副業人材が地方の中小企業と一緒に仕事をしています。

副業人材にインタビューをすると「自分のスキルが、こんなに喜んでもらえることに驚いた」「経営者と仕事をする中で、一つ上の視座で物事を見れるようになった」といった声を聞きます。

副業解禁が進み、さまざまなスキルを持つ人材が市場に増えれば、中小企業にとって選択肢が広がります。

社員の転職や離職への懸念といった短期の視点ではなく、人材のスキルアップが中長期的な視点で見ると、巡り巡って自社の利益となって返ってくる。

今一度、そのような視点で「副業解禁」について捉え直してみてはいかがでしょうか。

投稿者プロフィール

藤原 一輝
藤原 一輝
(株)MARKELINE 代表取締役
株式会社 ユナイテッドアニマルズ &WAKE事業部→2021年からJOINSに参画。自身もJOINSを通じて複数企業をサポートする人材として活躍中。情報発信を通じて“しなやかな働き方”を目指す副業人材と、副業人材を求める中小企業の架け橋となりたい。LINE Green Badge取得(LINE公式アカウント認定資格/広告運用認定資格)/(株)Maneql認定LINE公式アカウント・Lステップコンサルタント/SNS運用サポート・導線設計