“ハイコンテクスト・ローコンテクスト”とは

ハイコンテクスト・ローコンテクストって何?

ざっくり

10伝えるのに、
1を言えば10まで伝わるのがハイコンテクスト、
1から10まで言わなきゃいけないのがローコンテクスト

コンテクストとは「文脈」のこと

コンテクスト(context)の辞書的な意味は、

1. 文脈、〔文中の言葉の〕前後関係

2. 〔事件などの〕事情、背景、状況

(英辞郎 on the WEB|https://eow.alc.co.jp/

誰かが「朝だ、コーヒーをいれよう」とつぶやきました。

この人は、どんな状況でこの言葉をつぶやいたのでしょうか。爽やかに目が覚めて、コーヒーと新聞の準備に取り掛かろうとダイニングに向かっているところでしょうか。あるいは昨晩から寝ずに仕事に没頭し、そのまま夜を明かしてしまったので、リフレッシュしたいと思っているのか。あるいはちょうど今、富士山のてっぺんに到達したところで、仲間と祝杯を交わそうとしているのか―。

このように、相手から発せられる言葉には直接表れていない「文脈」や「背景」が、少なからず存在します。それがコンテクストです。

ハイコンテクスト

主に人と人のコミュニケーション(会話など)において、お互いのコンテクスト、つまり文脈や背景を高い(high)レベルで共有できている状態、関係、やりとりを「ハイコンテクスト」と言います。高いレベルで前提を理解しあえているから、「1を言えば10伝わる」のです。

ローコンテクスト

反対に、お互いのコンテクスト(文脈や背景)を共有できているレベルが低い(Low)状態が「ローコンテクスト」です。前提を理解しあえていないので、「10伝えるためには1から10まで具体的に話す」努力が必要になります。

ハイコンテクストな会話と、ローコンテクストな会話

ハイコンテクストは、効率的だけど、リスクが高い

ハイコンテクストな会話の例です。

リーダー

あの件、なるべく早くお願いします!

メンバー

あの件ですね、承知しました!
(・・・A商事への企画提案の件だな。なるべく早くってことだから、このあとすぐに取り掛かろう)

最小限の言葉で意思疎通が図れたら、コミュニケーションの効率も上がり、仕事のスピードも上がりそうです。しかし、もしリーダーの言う「あの件」が、「A商事への企画書の件」ではなく別の案件だとしたら・・・。

ハイコンテクストな文化や雰囲気の中でのコミュニケーションは、少ない言葉数で(あうんの呼吸というやつで)効率的に仕事が進む可能性もありますが、一方で、お互いに文脈を共有できているという「思い込み」から、認識のズレに気づかないまま仕事を進めてしまうリスクも潜んでいるのです。

ローコンテクストは、面倒だけど、リスクを減らせる

それでは、メンバーがローコンテクストの意識をもつと、どんな会話になるでしょう。

リーダー

あの件、なるべく早くお願いします!

メンバー

あの件というのは、A商事への企画提案の件でしょうか?
(・・・たぶんそうだろうけど、一応聞いておこう)

リーダー

あ、いやいや、B電工への御礼メールの件です 。

メンバー

あ、そっちですね、承知しました。今日このあとすぐにやっておきます
(あぶなかった、聞いといてよかった・・・)

リーダー

ありがとう。今日中になんとかよろしくお願いします。ちなみにA商事の件は来週でも大丈夫です。

言葉のやりとりが増え、一見「面倒」「非効率」「ひと手間」ではありますが、リーダーからお願いされた内容が明確になり、「勘違い」「思い込み」のリスクが消し込まれています。そうすることで、のちのち致命的な手戻りが生じるのを避けられるでしょう。

良い悪いではなく、コミュニケーションスタイルの違い

ハイコンテクスト・ローコンテクストは、主に国・地域による「異文化」の一つとして、コミュニケーションスタイルの違いを説明する際に用いられる概念です。例えば、英語圏はローコンテクストな文化であるのに対して、日本(語)はハイコンテクストな文化(多くを語らない、間接的な言い方をする、空気を読むことが時に美徳、など)という具合です。

しかし、当たり前ですが、どの国・地域にも(同じ日本語圏内でも)、ハイコンテクストなコミュニケーションを好む人もいれば、逆にローコンテクストなスタイルを重視する人もいます。

どちらが優れているということではありませんが、こういうスタイルの違いが存在することを知っておくことはとても重要です。

一人ひとりが、異なるコンテクスト(文脈)の中で生きている

大事なことは、「一人ひとりが異なるコンテクスト(文脈)の中で生きている」と考えることです。

日常のコミュニケーションの場面で、「自分が言っていることの背景や意図は、相手に正しく伝わっているだろうか」、「相手の文脈や想いなど、まだ自分に見えていない情報があるかもしれない」など、自分に問いかけてみる癖をつけられると、コンテクストの違いへの感度を高めることができるでしょう。

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投稿者プロフィール

岸 秀一朗
岸 秀一朗
パイオニア→三菱総合研究所→現在はソニーグループで組織開発/人材開発に携わる。シニアマネジャー。2020年~2022年、副業でJOINSに参画。組織を越えて、“個”として働くことに一歩踏みだす皆さんを全力で応援。DDIファシリテーター(コーチング)、キャリアカウンセラー(CDA)、ワークショップデザイナー。