地方企業の都市部の副業・兼業プロ人材の活用実態をまとめてみました。

地方企業の都市部の副業・兼業プロ人材の活用実態をまとめてみました。

みなさん、こんにちは。
JOINSの猪尾です。

地方で豊かな暮らしができる人を増やしたい。
いま、地方で暮らす人はこれからも続くように、
大都市で暮らす人もこれから始めやすくなるように。

この未来を引き寄せる可能性が、地方企業の大都市の副業・兼業人材の活用にあるのではないか。その仮説の元、2017年6月にJOINS株式会社を創業し、地方は長野県エリア限定で2年半、その後昨年秋から全国に広げてマッチングを行ってきて丸3年が経ちました。

この間に60社が人材を募集し34社が44人の副業・兼業の人材を採用頂きました。傾向を判断するにはまだ少ない実績数であることは重々承知のうえで、地方企業、地方企業の経営支援機関、大都市の副業・兼業に関心ある方々にとって、少しでも実態をお伝えし、ご自身の判断に役立ててもらいたい。

その考えの元、ちょっと勇気を出して、これまでの当社内での活用実態をデータでまとめてみました。

地方企業の副業・兼業プロ人材の活用実態の要旨

わかってきたポイントは以下の通りです。

  • 地方中規模企業が主にデジタル化(特に、ネット通販売上アップや手作業業務のIT化によるコスト削減)のために利用
  • 人材側は主に大企業(上場企業)所属中/経験ある首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)在住40-50代
  • 企業が人材に支払う費用は、平均10万円、稼働時間は約30時間
  • 1案件あたり平均応募人数5人し、約7割の企業が契約したい相手を見つけることができる買い手市場

それではデータに基づいて詳細をご紹介してきます。まずは今回集計したデータの前提からご説明いたします。

本データの前提

まず、副業・兼業については当社では以下のように整理しております。

  • 副業は、雇用契約を結ぶ企業がある人が、別の企業と業務委託契約等で業務をすること。
  • 兼業は、雇用契約を結ぶ企業がない人が、複数の企業と業務委託契約等で業務をすること。フリーランスと呼ばれる人たちは当社では兼業と位置付けています。

また、今回の集計データの対象は当社の3年間でマッチングを行ってきた以下の数値となります。

地方企業と副業・兼業プロ人材のマッチングの数値

上記の図の用語の定義を簡単にご説明しておきます。(なお、ここからは大都市の副業人材のことを副業・兼業プロ人材と記載することとします。)

(1)商談
副業・兼業プロ人材に関心があり、具体的に当社サービスの話を聞いてみたいと商談に応じていただいた企業数です。

(2)募集
当社Webサイト上で人材の募集(公募)をした企業数です。当社では、この公募に対して人材側が応募し、1・2次面談を経て契約に至るプロセスをご用意しています。

(3)登録
地方企業に副業・兼業で働くことに関心あり、当社Webサイト上に会員登録した個人の数です。

(4)応募
当社Webサイト上で募集される地方企業の案件に応募して下さった延人数です。

(5)契約
応募後、面談を経て、契約(条件合意も含む)に至った人数と企業数です。1社で複数人と契約する企業も生まレテいます。

今回の集計では、主に(5)の契約に至った44件のデータを主に集計しています。

それでは早速、詳しくご紹介していきます。

どのような地方企業が利用しているのか

まずはこちらをご覧ください。

従業員規模別企業数
規模別企業比率

利用企業の90%が中規模企業(製造業の場合従業員数が20-300人、詳細は定義参照)であることがわかります。また、業種についてはまだ全体数が少ないので判断は難しいですが、日本全体の中規模企業の分布と比較しても幅広い業種で利用されていると考えられます。

業種別企業比率

地域については当社が2年半は長野県限定で営業してきたので長野県が多いですが、他地域はほぼ今年になってから動き出し、徐々に広がってきています。

地域別企業数

どのような業務に利用しているのか

大事なポイントがこの点ですね。企業と人材が契約に至った44件の業務内容を以下の2つの軸で分類してみました。

既に行っている既存事業(既に売上が発生している事業)に関わる業務か、新たにゼロから立ち上げようとする新規事業に関わる業務か。そして、当該業務を主に手段としてデジタル技術の利用度を高めことに期待する業務(=デジタルシフト、デジタルトランスフォーメーション)か、それ以外か。その結果が以下です。

業務特性別件数

ここからわかるように既存事業のデジタルシフトによる業務改善が過半数を占めます。

さらに既存事業の分野を業務分野別に分解すると以下のようになります。

既存事業の業務分野別件数

人事分野が最も多く、それ以外は既存事業の広範囲の業務分野でデジタル化の案件が多くを占めます。直接部門(フロント)・間接部門(バック)別に分けた詳細は以下の通りです。

そして、コロナ以降、増加傾向にあるのは特に販売業務のデジタル化=ネット通販の強化や、マーケティング業務(特にプロモーション)をデジタル化=SNS経由での集客、などです。リアル店舗での売上低下が影響していると考えられます。

業務分野別の業種と業務内容
業務分野別の業種と業務内容

業務の成果は出ているのか

それではこれらの業務は果たして成果が出ているのか。直接的なデータは現時点ではないものの、成果を示す近いデータとして考えられる各案件の契約期間を示したデータが以下となります。

案件別契約期間分布

これは案件を2種類に分けて、それぞれ契約期間順に並べたものです。

まずこのデータの前提となる企業と人材との契約形態の概要は以下のようになっています。

  • 企業から人材に対して業務を委託する業務委託契約を直接締結
  • 報酬の支払い方は、人材の時給を定めて、実際に稼働する時間に基づき毎月請求が発生する準委任契約方式(成果物とその金額を定義し、成果物の納品時に請求が発生するのが請負契約方式ではない)
  • 報酬の支払い方は、人材の時給を定めて、実際に稼働する時間に基づき毎月請求が発生する準委任契約方式(成果物とその金額を定義し、成果物の納品時に請求が発生するのが請負契約方式ではない)

このような条件での契約雛形の提供を行っているのは、企業側のリスクを最小化し、契約を始めやすく終えやすくしたいという意図があります。この形態に基づくと、企業は人材に支払う毎月の費用に見合う成果が出ていなければある程度の期間を踏まえて契約は終了となるため、成果と契約期間は一定に相関関係にあると私は捉えています。

その上でこのデータのご説明をすると、当社では初期に募集した案件は「企業が抱える課題を伝え、その解決策の立案をできる人を募集する」方式を行っていました。しかし、その方法では3ヶ月で契約が終了し、実際に企業からの満足度も低かったため、途中から、「企業が抱える課題とすでに社内にある解決策を伝え、まずはその実行をできる人を募集する」方式に変更しました。

この2つの募集方式を契約期間で比較すると明確に後者の方が契約期間が長く=成果も出ている結果となっていることがわかります。

このことから、地方企業としては、まずは手足を動かして実行できる人材であれば成果が出やすいということが見えてきていると考えています。

どれくらい応募があるのか

応募人数別案件数

このグラフは、企業が当社Webプロダクト上に会員登録した人材に対して公募する形式でのマッチングを開始した2019年3月以降の35件を対象(それ以前は当社スタッフの人的ネットワークで人材を紹介する形式のため、現在の実態とは異なるため除外)に応募人数別に件数を並べたものです。

平均値は5.4人、中央値は5人となっており、企業は1案件あたり約5人の中から人材を選んでいることがわかります。

一方で、当社では顧客企業からヒアリングから以下のことがわかってきています。

  • 応募数は多ければ多いほどいい訳ではない。企業側の選ぶための負担は意外と大きい。
  • 経歴書だけ送付されても、大手企業の業務経歴書見ても中小企業にとってそれが役立つのかがわかりにくい。

よって当社では以下のように企業側が募集する際には「どんな人にきて欲しい」などの求人要件を記載するのではなく、「最初の業務としてやって欲しい具体的なことを」を記載した上で募集します。そして、人材は経歴書などの情報と共に、「最初の業務としてやって欲しい具体的なことを」の実現方法を記載して応募してもらうようにして、明確に、企業側の依頼に対応できるという人だけが募集できる仕組みにしています。

具体的内容
JOINSサイト内での案件募集における「具体的内容」
応募フォーム
JOINSサイト内での案件募集における「応募フォーム」

逆をいえば、それだけ応募のハードルをあげているのですが、それでも一定の数の応募がある状況となっています。

また、契約に至らなかった企業も含めて募集した企業全体で集計すると、55社(募集企業60社のうち5社は上記の2019年3月より前に利用)の人材募集に対して426件の応募があったため、平均7.7人の応募があり、人材を募集して1人も応募がなかった企業は0でした。

企業の人材との成約率

また、こちらは人材を募集した企業60社(2020/5/20時点で募集・面談中の10社を除く)のうち人材と契約に至った企業の割合を示しています。1つの企業が複数の案件を募集することがあるため、右側は企業が募集した案件のうち、人材に至った案件の割合です。

約7割の企業が人材との成約に至っています。

これらの結果から、副業・兼業の人材市場においては募集をかければ平均7人の応募があり、約7割の企業が契約したい人材を選んで見つけることができる、買い手市場であるということがわかります。

企業は複数の人材の選択肢の中から自社に合った人材を選ぶことができていることが上記の成果にもつながっていると考えられます。

どんな人材が利用しているのか

最後に人材像にも迫っていきます。もう一息お付き合いください。

性別/年齢別案件数

人材については、年代・在籍企業において2つのグループがあることがわかってきました。

一つ目のグループが30-40代前半で大手IT企業に在籍の方達です。この方達が主に上記のデジタル化案件を契約するケースが多くなっています。

もう一つのグループは50代の大手製造業などに在籍する方達です。この方々は、人事や海外営業などの案件を契約するケースが増えています。

なお、案件別の契約人材の平均値は45.5歳、中央値も45歳となっています。

次にどこに在住の方なのか。

居住地別案件比率

8割以上の方が東京・神奈川・千葉・埼玉の首都圏在住の方となっています。この比率は当社に登録する人材の比率とほぼ同じです。

次に副業・兼業の比率です。

副業/兼業比率

契約案件のうち3分の2程度は、別に雇用契約をもつ副業の方という結果でした。母数である登録人材もほぼ同程度の割合となっています。

最後に報酬についてもご紹介します。

以下をご覧ください。

月額報酬別案件数
時給単価・稼働量別分布

こちらの通り、報酬金額の平均は約10万円。その内訳としては、稼働時間が約30時間で、時給が3,600円という結果となっています。

時給単価については、人材側から提示する方式にしており、その単価金額も含めて、企業側が契約する人材を選ぶ形となっておいます。

いかがでしたでしょうか。少しでも身近にイメージを感じていただけたでしょうか。

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